派遣の施工管理で働くとき、無期雇用と有期雇用の違いによって、安心感はかなり変わります。結論から言うと、無期雇用は派遣会社の正社員として雇用される働き方で、会社は簡単に解雇できません。一方で、無期雇用でも派遣社員であることには変わりません。

この記事では、無期雇用と有期雇用の違いについて、私が相談を受ける中で実際にあった話も交えながら、次の内容を順番に解説します。
- 無期雇用と有期雇用の違い
- 無期雇用が簡単に解雇されない理由と、会社が解雇できる条件
- 悪い派遣会社が使う「退職届を書かせる」手口と対処法
- 自己都合退職と会社都合退職の違い
- 有期雇用は避けるべきかどうか
- 有期雇用の3年ルールと5年ルール
- 未経験者が無期雇用派遣と本当の正社員をどう考えるか
なお、ここで書く内容は一般的な法律の考え方です。実際の解雇や退職の扱いは個別の事情で判断が変わるため、困ったときは労働基準監督署や総合労働相談コーナー、弁護士などの専門家に相談してください。
無期雇用と有期雇用の違い
有期雇用は、「3か月」「6か月」「1年」のように契約期間が決まっている働き方です。期間が終わるときに契約が更新されなければ、そこで仕事が終わります。無期雇用は、契約期間の定めがない働き方で、派遣会社の正社員として雇用されます。
| 比較項目 | 有期雇用 | 無期雇用 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 決まっている(更新が必要) | 定めなし |
| 雇用主 | 派遣会社 | 派遣会社(正社員) |
| 派遣先の契約が終わったとき | 雇用契約も期間満了で終わる可能性がある | 雇用は続く。次の派遣先が決まるまで待機 |
| 派遣先が決まらない間の収入 | 契約期間内は賃金・休業手当の対象。更新されなければ終了 | 平均賃金の6割以上の休業手当が必要(会社によってはそれ以上) |
| 解雇のされやすさ | 期間満了での雇止めがありえる | 簡単には解雇できない |
| 派遣の3年ルール | 対象 | 対象外 |
| 5年ルール(無期転換) | 通算5年を超えると申込権が発生 | すでに無期なので対象外 |
派遣先の契約が終わっても、無期雇用なら派遣会社との雇用は続きます。派遣先が決まるまでの待機期間も、平均賃金の6割以上の休業手当が支払われます。収入が途切れる不安が少ないのが、無期雇用と有期雇用の違いの中でも大きなポイントです。
無期雇用は簡単に解雇できない。会社が解雇できる条件とは
日本の法律では、解雇には厳しい条件があります。労働契約法16条は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効」と定めています。会社が「辞めさせたいから」という理由だけでは、解雇はできません。これは無期雇用の派遣社員にも同じように適用されます。
さらに、解雇する場合は、30日前の予告か、30日分以上の平均賃金の支払いが必要です(労働基準法20条)。
派遣先の契約が終わっただけでは解雇の理由にならない
派遣では、派遣先との契約(労働者派遣契約)と、派遣会社との雇用契約は別のものです。派遣先との契約が終了しても、それだけで派遣会社との雇用契約が終わるわけではありません。次の派遣先を探し、見つからない間は休業手当を払って雇用を維持するのが派遣会社の役割です。
会社が解雇できる可能性があるのは、主に次のようなケース
- 勤務態度が著しく悪く、何度指導しても改善されない場合:遅刻や居眠りが繰り返されるなどして、注意や指導を重ねても直らない場合です。会社が指導の記録を残し、改善の機会を与えていることが前提になります。
- 重大なルール違反があった場合:無断欠勤を続ける、会社や派遣先に損害を与える行為をする、ハラスメントをするなどです。
- 会社の経営が深刻に悪化した場合(整理解雇):ただし、解雇を避けるための努力をしたか、対象者の選び方は妥当か、説明をしたかなどが厳しく見られます。
よほど勤務態度が悪くなければ、会社側は簡単に解雇できません。逆に言えば、遅刻や居眠りのように本人が直せる原因で、何度指導されても改善されなければ、雇用関係を解除されても仕方がありません。
能力不足や、派遣先が見つからないことは、会社の責任が大きい
未経験の人を無期雇用で採用するのは、派遣会社が取るべきリスクです。能力が足りない場合も、会社は必要な教育や研修をする責任があり、「できないから解雇」はそう簡単に認められません。
また、無期雇用で雇っておきながら、派遣先を確保できないのは、派遣会社の責任です。派遣先が決まらないことを理由に解雇するのは、本人に原因がないため、特に認められにくくなります。
悪い派遣会社は、説得して退職届を書かせようとする
ここからは、実際に私のところに届いた相談にもあった話です。解雇は難しいと分かっている悪い派遣会社は、「解雇」ではなく、本人に「辞める」と言わせようとします。
「次の派遣先が決まらないから、いったん退職届を出してくれないか」「あなたのためにも、自分から辞めたほうがいい」と説得し、その場で退職届を書かせるのが典型的な手口です。解雇は難しくても、本人が自分で辞めたことになれば、会社は責任を問われません。
退職届を出して辞めると、原則として自己都合退職になります。自己都合退職になると、後で説明するとおり、失業給付などで不利になることがあります。
退職届を求められたときの対処法
- その場で書かない・サインしない:「持ち帰って考えます」と伝えて、一度会社を出ましょう。
- 辞める気がないなら、はっきり伝える:「退職するつもりはありません」と、できればメールなど記録が残る形で伝えます。
- 会社が辞めさせたいなら、解雇として手続きをするよう求める:解雇なら、解雇予告や、請求すれば解雇理由証明書の交付(労働基準法22条)が必要です。
- やりとりは記録に残す:面談の日時、言われた内容、メールなどをメモやデータで保存しておきます。
- 早めに相談する:労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、弁護士などに相談します。
一度サインした退職届は、後から「やっぱり無かったことに」と言うのが難しくなります。納得できない間は、絶対にサインしないことが大切です。
自己都合退職と会社都合退職の違い
退職には、大きく分けて自己都合退職と会社都合退職があります。どちらになるかで、失業給付(雇用保険の基本手当)の受け取り方が変わります。
| 比較項目 | 自己都合退職 | 会社都合退職(特定受給資格者など) |
|---|---|---|
| 給付制限 | 待期7日のあとに1か月の給付制限(2025年4月以降、原則) | 給付制限なし。待期7日のあとに給付開始 |
| 給付日数 | 90〜150日 | 90〜330日(年齢・被保険者期間による) |
| 代表的な例 | 自分の意思で辞めた | 解雇・倒産・退職勧奨など会社の事情で辞めた |
給付制限や日数の細かい条件は変更されることがあるため、最新の情報はハローワークで確認してください。
無期雇用で雇っておきながら、派遣先を確保できずに雇用を終わらせるのは、派遣会社に責任があります。この場合は会社都合にできる可能性が高いです。だからこそ、退職届に安易にサインして自己都合にされてしまうのは避けたいところです。離職票の離職理由は、会社の記載をそのまま受け入れず、納得できなければハローワークで異議を申し立てることができます。
ただし、遅刻や居眠りなど勤務態度の悪さが原因で、何度指導されても改善されずに契約を解除された場合は、本人に原因があるとみなされることがあります。
有期雇用は避けるべきか?
無期雇用と有期雇用の違いを知ったうえで、結論から言うと、有期雇用だからといって、必ず避けるべきではありません。私自身、派遣の施工管理を有期雇用でスタートして、2年くらい経ったときに無期雇用に変えてもらいました。
当時と今は事情が違います。今は、ほとんどの派遣会社が無期雇用契約を結んでいます。人手不足が深刻になり、仕事が途切れる心配がほとんどないからだと私は考えています。この点は、次の記事でデータをもとに書いています。
詳しくは、派遣は本当に不安定なのかを施工管理技士の人手不足データで検証した記事をご覧ください。

有期雇用で始めるなら、無期への切り替え条件を明確にしておく
有期雇用で契約する場合は、ずるずると有期雇用のまま引き延ばされないように注意が必要です。最初の契約更新のタイミングで無期雇用に切り替えてもらうなど、条件を明確にしておいたほうがいいです。
- いつ無期雇用に切り替えるのか(最初の更新時、1年後など)
- 切り替えるための条件があるのか(あるなら具体的に何か)
- 口頭だけでなく、書面やメールで残してもらう
面談で確認しておきたい質問は、次の記事にまとめています。

有期雇用の3年ルールと5年ルール
有期雇用には、「3年ルール」と「5年ルール」という、別の2つのルールがあります。名前が似ていて混同されやすいので、違いを整理します。
| 3年ルール | 5年ルール | |
|---|---|---|
| 根拠となる法律 | 労働者派遣法 | 労働契約法(無期転換ルール) |
| 何が3年・5年か | 同じ派遣先の同じ組織(課など)で働ける期間 | 同じ会社(派遣会社)との有期契約の通算期間 |
| 対象 | 有期雇用の派遣社員(無期雇用は対象外) | 有期契約で働くすべての人 |
| 期間を超えたとき | それ以上は同じ組織で働けない。派遣元に雇用安定措置の義務 | 本人が申し込めば、無期雇用に転換できる |
3年ルール(派遣法の期間制限)
3年ルールは、派遣先の同じ組織(課など)で、派遣社員として働けるのは最長3年までというルールです。派遣先の事業所単位の期間制限と、派遣社員個人単位の期間制限の2つがあります。派遣先が過半数労働組合などの意見を聴けば、事業所単位の期限は延長できますが、個人単位の3年は延長できません。同じ人が同じ課で働けるのは3年までです。
3年を超えて働けるのは、派遣会社と無期雇用契約を結んでいる人など、例外に当たる場合です。無期雇用の派遣社員は、この3年ルールの対象外です。
同じ組織で3年働く見込みの有期雇用の派遣社員に対しては、派遣会社に「雇用安定措置」を講じる義務があります。具体的には、次のうちのいずれかです。
- 派遣先への直接雇用の依頼
- 新たな派遣先の提供
- 派遣元での無期雇用
- その他の雇用の安定を図るための措置
派遣に関する法律の基本は、次の記事にまとめています。

5年ルール(労働契約法の無期転換ルール)
5年ルールは、同じ会社と結んだ有期契約が、通算で5年を超えたときに、本人が申し込めば無期雇用に転換できるというルールです。派遣では、派遣先ではなく、派遣会社との契約が通算されます。派遣先が変わっても、派遣会社が同じなら、契約期間は通算されます。
無期転換は、本人が申し込んで初めて成立する点に注意が必要です。申し込めば、会社は断れません。ただし、契約と契約の間に6か月以上の空白があると、通算期間がリセットされることがあります。
3年ルールは「派遣先で働ける期間」の話、5年ルールは「派遣会社と有期契約を続けた期間」の話です。まったく別のルールなので、混同しないようにしましょう。
無期雇用は派遣会社の正社員であって、派遣社員であることには変わりない
ここまで無期雇用のメリットを書いてきましたが、ひとつ大事な注意があります。無期雇用は派遣会社の正社員であり、働き方としては、派遣先に派遣される派遣社員であることには変わりません。
- 派遣先の指示のもとで働き、派遣先が変わる可能性がある
- 昇給や賞与、退職金などは、派遣会社によって大きく違う
- 施工会社(ゼネコンやサブコン)に直接雇用された正社員とは、立場も待遇も違う
特に未経験者は、無期雇用派遣の正社員で満足せず、本当の正社員を目指したほうが安心です。無期雇用で未経験者を採用するのは、派遣会社にとってもリスクが大きく、条件が厳しいことがあります。慎重に考えたほうがいいです。
未経験から派遣の施工管理を目指すリスクについては、次の記事で詳しく書いています。

まとめ
- 無期雇用と有期雇用の違いは、契約期間の定めの有無。無期雇用は派遣会社の正社員で、派遣先の契約が終わっても雇用は続き、待機期間は平均賃金の6割以上の休業手当が支払われる
- 無期雇用は簡単に解雇できない。解雇できるのは、何度指導しても改善されない勤務態度の悪さなど、合理的な理由がある場合に限られる
- 悪い派遣会社は、説得して退職届を書かせようとする。その場でサインせず、持ち帰って相談する
- 派遣先が確保できないのは派遣会社の責任で、会社都合にできる可能性が高い
- 有期雇用は避けるべきとは限らないが、無期への切り替え条件を事前に明確にしておく
- 3年ルールは派遣法で有期雇用が対象、5年ルールは労働契約法で派遣会社との通算契約が対象
- 無期雇用でも派遣社員であることは変わらない。未経験者は本当の正社員も視野に入れて慎重に考える
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